Prettierのメンテナーをやめる
2019年から続けてきたPrettierのメンテナーをやめることにした。
実は直近一年では20コミットくらいしかしていなかったためもうすでに引退しているようなものだった。でもPrettierのメンテナーとして多くの人に僕のことを知ってもらって応援してもらっていたと思うので、あらためてやめることを明示的に宣言する。
やってたこと
僕がPrettierのメンテナーになったのは2019年で、筑波大学に入学した直後のことだった。それまで僕はWebアプリケーションのフロントエンドとバックエンドの開発が人並みにできるようになったという感じのスキルセットで、逆に言えば他のことは何もできなかった。
趣味か仕事かどっちかは忘れたけど、ふと見つけたPrettierのバグをなんとなく直してみて、それを繰り返しているうちにメンテナーになった。そして、今もそうだけど、当時のPrettierは人手不足だったから気づいたらリリースマネジメント的なことを含めたほぼ全ての仕事をする状態になっていた。2021年くらいからはOpenCollective上でいただいた寄付金から毎月1500ドルをもらって、ある程度サステナブルな形でPrettierのメンテナンスに取り組んでいた。
ちなみに当然だがあまりメンテしなくなって以降はOpenCollectiveからの資金は受け取っていない。
良かったこと
Prettierのメンテナーであることは多くの人と出会うきっかけになった。Prettierのメンテナンスをしているというだけで多くの人が僕に興味を持ってくれた。みんなが実力以上に高く評価してくれるようになった。この現象自体はまあまあ気持ち悪いんだけど、そのおかげで良い仕事と多くの友人を得ることができた。
そして、Prettierのメンテナーとして活動することで色々なことを学んだ。Webアプリケーションの作り方しか知らなかった状態から、Prettierのメンテナンスを通じて、JavaScriptやTypeScriptの構文に関する深い知識や、パーサーの書き方、速いプログラムの書き方、ユーザーの多いOSSのメンテナンスの仕方などを身につけることができた。これらの能力と経験がなければ今の仕事を得ることはできなかった。
何よりも、優秀なエンジニアたちと共同して6年という長期にわたってPrettierをメンテナンスしたという経験そのものが、本当に得難いものだったと感じる。僕がPrettierに貢献し始めた頃によくPRをレビューしてくれていたLucas Duailibe と Alexander Akait。本当に素晴らしい設計とコードレビューをしてくれた Georgii Dolzhykov。寄付金の取り扱いについて調整し、サステナブルなメンテナンスを実現してくれたChristopher Chedeau。そして、今もPrettierをメンテしてくれている fisker Cheung。本当にありがとう。
やめる理由
ではなぜPrettierのメンテナーをやめるのかというと、いくつか理由はあるけど、一番重要なのは単に飽きてしまったということだと思う。長い間同じソフトウェアのメンテナンスをし続けるというのは、精神的にはなかなかハードだ。特にPrettierのような明確な責務がすでに決まっているようなソフトウェアだと尚更だ。
実は2023年くらいからすでに飽きていたんだけど、それでも続けていたのは毎月1500ドルというお金が必要だったからだ。Ubieでの僕の給料はそんなに高くなかったので、生活のために副業として飽きながらも続けていた。しかし転職して、買収されて、そういう理由で続ける必要は無くなった。
また、余暇時間を突っ込む先としてもっと優先しなければならないものが増えたという理由もある。具体的には英語学習である。今の仕事では英語が必須であるにも関わらず僕は英語が話せないので、まとまった余暇時間は全て英語の学習に突っ込みたい。
こういった複合的な理由からPrettierのメンテナーとしての活動はどんどん減っていたため、最終的に完全にやめるという決断をした。
今後のPrettier
今のPrettierは主にfisker Cheungによってメンテナンスされている。彼は僕と同じ時期にPrettierへの貢献を始めていてすでに6年以上の経験がある。ものすごく手を動かすし、色々なことに気づいてくれる、とても優秀な人だ。今後は彼の判断で新しいメンバーをメンテナーとして採用するかもしれないし、しないかもしれない。
とにかく、僕がほとんど関わらなくなったPrettierはこの一年間積極的に開発されているので、特に心配する必要はないと思う。